おすすめ度 ☆☆☆☆
あらすじ
ジョナサン・グレイザー監督による衝撃的な映画で、第二次世界大戦中のアウシュヴィッツ強制収容所を舞台にしています。物語は、収容所の指導者であるルドルフ・ハースの家族が描かれ、彼らの「平和で理想的な」日常と、収容所で繰り広げられている恐ろしい現実が対比されます。
主人公であるハースの妻は、家族と共に無邪気な生活を送る一方で、その周りでは絶え間ない残虐行為が繰り広げられています。この映画は、ナチスの残虐行為に対する無関心や、日常の中での道徳的無感覚を鋭く描き出し、観客に戦争の恐ろしさと人間の冷徹さを強く印象づけます。
美しい映像美と静かな緊張感で構成されるこの作品は、道徳と人間性を問いかける深い問題を投げかけ、見る者に衝撃を与えます。
印象に残った点
・ずっと聞こえる音の演出
ほぼ全てのシーンで聞こえる音。隣に収容所があることを観客に忘れさせない、すり込ませる、そんな意図が感じられました。また、赤ちゃんもずっと泣いているんです。それなのにみんな幸せそうに、楽しそうに暮らしている、言葉では表せない不気味さを感じさせられる演出だと思いました。
・庭のシーン
草花で色鮮やかな庭、誰もが一見素敵だと褒めたくなるけれど、観ているとどこか不気味な感じがします。個人的にはひまわりが映るシーンです。背の高いひまわりが立派に咲いているのですが、収容所の壁に背を向けて咲いている。映像の撮り方もひまわりがアップされているのに後ろから、という点がユダヤ人への無関心さを感じてゾッとしました。
・最後のジャンプカット
ルドルフが最後に螺旋階段を降りていくシーンです。急に現代のアウシュビッツ収容所の管理をしている人たちの映像になります。会話もなく、淡々と掃除をしている姿がそこそこ長いです。そこからまた急にルドルフのシーンに切り替わります。現代の人々もルドルフも結局は他人事。ただ確かにユダヤ人惨殺という酷い、吐き気のするような出来事は昔起こった事実。気持ち悪さと他人事さをどちらも象徴しているようなシーンに感じました。
個人的考察
「関心領域」という映画は、ナチスがユダヤ人大量虐殺を行った、という誰もが知っている出来事を現代の人々はどのように感じているか考えさせる作品なのかなと感じました。
きっとこの話の家族=観客(現代人)、なのでしょう。側からみたら耐えられようもないことが隣で起こっていても、自分に関係がなければ興味がない、関心すら持たない。もちろん興味のある人は0ではないし、そういう人はヘドウィグのお母さんのようにあの家の歪みに気がつき出ていってしまうのではないでしょうか。ただ確実に育った環境で人間は形成されるのです。現代に置き換えるならいじめとかがいい例なのかな…と思います。いじめられた人、周りの無視した人、助けた人などなど?考えるとわからなくなってきてしまいますね…
感想
本当にただの自分の感想です。うまく文章化できる気がしないですが…
まず一つ目です。冒頭がすごい。絶妙な不協和音から始まり、ずっと暗転したまま。お芝居とかのような、序曲のような。これからどんな物語が始まるのかを表しているような。初手から引き込まれる構成に感じました。
二つ目。音の演出。上記で印象に残った点でも挙げましたが、音の効果がほんとうにすごいです。作り手のこだわりがよくわかります。環境音って状況説明に加えて自分がそこにいるかのような気持ちにさせると思うので、より話に入りやすくなりました。まるで自分があの家族の一因のような。
三つ目。夜食料を隠し配るシーンです。初めは誰が何をしているのかよくわかりませんでした。数回似たようなシーンがありますが、あれは結局何視点だったのでしょうか?未だに理解しきれていないですが、個人的には監視カメラ的なものなのかなと。難しいので他の考察サイトで調べまくりたいと思います。
四つめ。子供たちの発言です。あまりセリフシーンは多くないのですが、だからこそその言葉一つ一つに意味があるのでは?と考えずにはいられません。最後の方に銃声が響いた後の男の子のセリフとかもう意味深すぎて…!
最後に調べたところ、タイトルの「関心領域」とは実際に意味を持つ言葉らしく、当時の収容所から一定の距離の場所に住んでいる人のことを指していたらしいです。
あと、大体面白い映画って他の作品を出してきますよね。今回はヘンゼルとグレーテルでしたが、これももちろん意味があってのことだと思います。魔女が悪いのか、ヘンゼルとグレーテルが悪いのか…見方によってはヘンゼルたちの行動も相当酷い…ナチスと重ねているのかもしれませんね。
現在アマプラで無料で見ることができるので、ぜひ観てほしい作品です。
この不気味な気持ち悪さを味わいませんか?